41:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:18:58.78 ID:LZSY7jKs.net
「俺はもう、年単位で自分の部屋の床を見た覚えがない」

「ちゃんと掃除しろw」

「そこで掃除って言うのがね…必要なのは産廃業者だよ」

「威張るなwww」

「なんなら、自分の目で確かめてみる?」

「え………いいの?行っても?」

「いいの?って、俺が聞きたいよ……ほんと、マジで汚いぞ?」

http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news4viptasu/1483437020
42:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:20:37.91 ID:LZSY7jKs.net
とりあえず投下してるけど、読んでもらえてるのかな…

43:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:23:15.17 ID:V+Dkybdy.net
ノリが寒い

47:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:24:51.19 ID:LZSY7jKs.net
>>43
そうか…
でも大量に書き溜めてしまってるんだ…

45:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:24:08.23 ID:58UzqxIB.net
読んでるよ

46:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:24:11.99 ID:mbe5AZfB.net
あげときゃ誰か見てるからいちいち気にすんな

48:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:25:36.74 ID:LZSY7jKs.net
>>45-46
ありがとう!

49:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:26:05.50 ID:LZSY7jKs.net
M君の部屋は、汚いというのとはちょっと違った。
想像してたような、ゴミとか洗濯物が散乱してるような不潔さはなかった。
一応、床も部分的には見えてたしね。

ただ、部屋のわりには大きすぎる本棚が一つ。
そこから溢れた本とCDとDVDが、床にうず高く積まれていた。
彼は、読書と映画と音楽をこよなく愛する、かたづけられない男だった。
なるほど…TSUTAYAの倉庫ね。

私は映画は全然詳しくないけど、本は好き。
だからM君の蔵書量には驚いた。


「そっか…高校生のころも読書家だったもんね」

「忙しくて、いまは全然だけどね」

「あーでもこれで、えっちいのとか発見しちゃったら気まずいー」

「そこはひとつ、大人な対応で…」

「……………えええっ!M君、何これ!?」


見つけたのは、えっちいのではなくて、とある画家の画集だった。
私がご予算的にマゴマゴしているうちに
販売終了してしまった限定版が、無造作に床に積まれていた。

50:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:26:38.18 ID:LZSY7jKs.net
「うわー!これ高かったでしょ?」

「あれ、喪子もその画家、好きなの?」

「うん!しかもフルセットだ~。すげ~」

「まーそういうのに散財できるのが、独身の醍醐味ですよ」


彼はその他にも、高額そうな画集から中古の文庫本までを、ガンガン床に積んでいた。
DVDも、私が全然知らない映画のボックスがいくつも並んでいた。
そして目的のCDはというと、一目で捜索を諦めるのにじゅうぶんな状態だった。


M君への貧乏疑惑は消えた。
これだけ趣味のものを溜め込んでいるとなると、生活苦ということはないだろう。
アパートがボロいのは、趣味にお金を回すためなのかもしれない。

51:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:27:04.38 ID:LZSY7jKs.net
堆積物を夢中で眺め倒している私に、M君が言った。


「なんか、久しぶりに自分以外の人が部屋にいるの見てると
部屋の惨状が客観視できて、自分でも引くわ…」

「そこまで卑下することないよ、帰ったら靴下履き替えるけどw
でもこの部屋、なんだかすごい落ち着くんだよねー」

「さては、何もない広い空間が苦手なタチだな?」

「ああ、それだw」


まるで図書館のようなその部屋は、乱雑ではあったけど
それなりの秩序があって、妙なバランスで落ち着いていた。
なんだかそこに、M君の内面が現れているような気がした。


「じゃあ、CDはまた今度ってことで、本日はご満足いただけましたかね?」

「うん、あのねM君、お願いがあります」


ちょっと思いきってみた。

52:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:27:29.34 ID:LZSY7jKs.net
「ん?なに?」

「私、またこの部屋にお邪魔しちゃ駄目かな?」

「駄目だよ」

「えっ、即答かい!」

「うん、ごめんね」

「じゃあ、私と友達になるとかは?」

「…友達」

「うん、友達。その先の下心、全くない」

「友達……は、どうかなあ」


M君は、飲み会の最初のときに見せたみたいな苦笑いをした。

53:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:27:58.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺、友達はもう増やさないことにしてるからなあ」

「え、なにそれ。じゃあ彼女なら?」

「さっき自分で下心ないって言ったじゃないかw」

「うん、だって本当にM君の彼女になりたいとかじゃなくて
ただ単に仲良くしたいと思ってるんだよ。
M君、M君と私は、かなり気が合うよ」

「お。さすがですね、その押しの強さw」


この「さすが」は、私の職業柄をさしての言葉です。
押しが強いってより、言いたいことは言っちゃわないと気が済まないだけなんだけどね。


「だけど、今は仕事じゃないからね…
断られても押しかけたりしないから、大丈夫w」


こういうときの立ち直りの早さは、喪女歴の長さが物を言います。
さーて、あのCM曲のタイトルがわかっただけでもヨシとしよう、
なんて思いながら、なるべく上手にさっぱりと立ち去る準備をしていたら。

54:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:28:24.41 ID:LZSY7jKs.net
「あのさ………
俺、友達って、"なりましょう"ってなるもんじゃないと思うんだ」


そんなこと言われなきゃ、こんなこと言う気なかったんだけど。


「うん、まーそうかもしれない。
でも、"増やさない"って決めるもんでもないと思うよ?」


よくわからなかったけど、この会話はM君にとって、なにか重要なものらしかった。


「そっか………ごめん。
なんか俺、面倒くさいこと言ってるな」

「ううん、私が変なこと言い出したからだよ。
こっちこそ、気を遣わせちゃってごめんね!
私としては、今日が楽しかったからオッケーさw」

「CD、見つかったらメールする」

「えー、友達じゃないのに?w」

「………うん」

55:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:28:54.52 ID:LZSY7jKs.net
このとき、M君が何をどう考えてたのかは知らない。

だけどその後、CDが見つかったってメールがきて、また外で食事して
それからはなし崩しに、なんとなーく呼んだり呼ばれたりして
時にはM君の部屋で、語らったりして。

つまり、私たちはいつの間にか、紛れもない友達関係になっていた。
まあ私としては、最初の望みが叶ったわけだから、何の文句もなかったんだけど。


でもだったら、あの日のM君のきっぱり拒絶は、一体なんだったんだろう……?


という疑問と戸惑いが、私の中になかったわけではない。
だけどそこに触れるのは大人げない気がした。

私はいろんなことをあんまり深く考えない、単純ノンキ。
でもM君は反対で、繊細で思慮深く、ちょっと屈折したとこのある人。

だからきっと、私では思いもつかないことを考えていたんだよ、うん。

56:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:29:17.71 ID:LZSY7jKs.net
正直に言います。

ガサツな私からすると、M君のそんな繊細さ、思慮深さは、
時に複雑すぎて面倒で、臆病さを感じさせもした。

前にも書いたとおり、私の好みは、見た目も性格もごつくて男らしい人。
イケメンで、優しくて、控えめで、線の細いM君は、その対極。
失礼ながら、私には彼がただの気弱な優男にしか見えていなかった。

同じように、M君だって私のことを
ガハガハよく笑ううるさい女って程度にしか見てなかったと思う。
そんなふうに、私たちは最初、お互いを異性としては全然見てなかったんだ。

それがあることをきっかけに、私の気持ちが大きく動いてしまったのです。

57:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:29:45.59 ID:LZSY7jKs.net
飲み会からは、半年以上たったころだったかな。
M君の車で、ちょっと遠くの美術展に出かけたことがあった。

外で会うときはいつも現地集合、現地解散だったので
おー、なんだかデートみたいですぞ!と、ちょっと浮かれた私。
それでバチでもあたったんだろーか。

帰りに寄ったコンビニで、私は自分で出したゴミを捨てようと、鍵を借りて車に戻った。
ゴミの入ったビニール袋を取って振り返ったら、隣の車に袋が当たってしまった。

そしたらその車から、わかりやすいDQNが降りてきた。二人も。

58:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:29:50.78 ID:syQ8ziL7.net
女ってどんな容姿でもどんな性格でも必ず彼氏がいるよね

59:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:30:09.89 ID:LZSY7jKs.net
「おい!いまそれぶつけただろ!」

「すっ、すいません!」

「傷がついただろうがああああん?」

「え、え?」


DQNはぶつけたところを見てもいない。

し、しまった~、からまれた…

おどおどしてるところへ、店内からM君登場。


「どうしたの?」

「え、あんた、こいつのツレ?」

「そうだけど、なに?」

60:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:30:50.85 ID:LZSY7jKs.net
DQNは、私が女一人でからみやすいと思ってたんだろう。
M君にちょっとたじろいだけど、方針は変えないみたいだった。

私が言うのもなんだけど、優男代表みたいなM君です。
いける、と思ったんだろうな。


「こいつがその袋を俺の車にぶつけたんだよ。傷がついたから、直してもらうから」

「ぶつけたの?」

確認してくるM君。

「うん…ちょこっとぶつけちゃった…」

「なにが入ってるの?」

はい。お菓子の空き袋と、空のペットボトルです。

「これで傷がつくって、一体どんな勢いでぶつければ……」

M君はDQNの車のわきにしゃがみこんだ。

61:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:31:31.42 ID:LZSY7jKs.net
「どのへんにぶつけた?」

私に尋ねるM君。

「えーと、たぶんこのへん…?」

「どの傷だかわかる?」

DQNに尋ねるM君。

「そんなんわからねーよ。そこらの傷、全部だよ」

「一度ぶつけただけでこんなに傷がつくはずないだろ。どの傷かって聞いてんの」

「わからねーから全部直せっつってんだよ!」

「なんで因縁つけといてンなこともわからねーんだよ!」


………逆ギレとな!?

62:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:32:02.42 ID:LZSY7jKs.net
M君は突然、ガラの悪い人にジョブチェンジしていた。

下から睨むM君、ああン?って感じで詰めよるDQN。
へにゃちょこ優男だと思ってたM君だけど
そうやって凄むと、顔キレイなぶん、怖いです。


それにしても、なんか見たことあるなあ、この構図。

………ああ、龍虎図だ。


「ぶつけたって認めといてバックレる気かよ!」

「直さねえとは言ってねえだろ、こっちでつけた傷はどれだって聞いてんだよ!」


な、なに言ってんの、M君!?
やめてー!お願いだから煽らないでー!
争いより愛を、喧嘩売るより通報を!

と思ってたら、DQNは二人でなにか相談しはじめた。

63:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:32:27.97 ID:LZSY7jKs.net
「あー、もうめんどくせーからいいよ。
俺ら、ヤクザの知り合いいるから。いまから呼ぶから」


えっ、リアルで初めて聞いたけど…本当に言うんだ、このセリフ!


「わかった。待つから早く呼んで」


えっ、待っちゃうの!?!?


M君は立ち上がると、私の手を引いて車とDQNから少し離れた。
するとDQNは、また二人でごちゃごちゃなにか言ったあとに

「今日はもういいよ、めんどくせー」

とか言いながら、車に乗って行ってしまった。


ぽかーん…。
いないんだ、ヤクザの知り合い…

64:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:32:54.94 ID:LZSY7jKs.net
私は車の中で猛烈に謝った。


「ごめんね!迷惑かけて本当にごめん!」

「べつに喪子のせいじゃないよ。それより、大事にならなくてよかった」

「あのー……M君、ひょっとしてこういうのに慣れてる…?」

「人聞き悪いなー。内心ビクビクでしたよ」

「でも、やけに落ち着いてなかった?」

「うーん。俺、高校卒業してから、あちこちふらふらしてた時期があるんだけどさ」

「ああ、バックパッカー?」

「てほど本格的でもないけど。
それでトラブルに巻き込まれたときの対応覚えた」

65:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:33:21.95 ID:LZSY7jKs.net
M君いわく、因縁をつけられたときは

「抵抗しない、同意しない、相手と同じ人格になる」

が鉄則だそうです。


「だけど、直さないとは言ってないって、同意になるのでは…」

「でも直すとも言ってないし」

「き、詭弁だあ…」

「結果オーライ」

「でもさ、本当にヤクザ呼ばれたらどうするつもりだったの?」

「まー呼ばないでしょうよ。
素人相手にタカリ失敗しましたって言いふらすことになるし。
それよりも、あそこで弁護士呼ぶぞって言われる方がよっぽど怖いわ」

66:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:33:50.24 ID:LZSY7jKs.net
イケメンで、優しくて、控えめで、大人しくて、気弱な優男だったはずのM君。
確かにそれが彼ではあるんだけど、でも、それで全てじゃあなかった。

思いがけず肝が据わったところを見せられて
私は初めてM君を「かっこいい」と思った。
サビついていたマイハートが、ゴロンゴロンと動き始めた。


吊り橋効果もあったんだろうけど、私はM君に恋をした。

67:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:34:34.61 ID:LZSY7jKs.net
言いたいことは言ってしまわないと、気が済まない性分の私。
これまでそうして何度となく玉砕してきたわけですよ。
でもこの時は、そのまま突っ走ろうとする自分を引き止めるものがあった。

それはチラチラと見え隠れする、M君の屈折した思考の根っこにあるものだった。
一体それが何なのか、私には全く理解できていなかった。

そんなミステリアスなところもステキ…
なんていう乙女な恋愛観が、残念ながらない私には
彼のミステリアスさについて、一つの可能性が思い浮かんでいた。


M君ってさ、ひょっとして…………ゲイなんじゃないの?


別に彼は、ナヨナヨしてるとか、オネエっぽいとかじゃあない。
だけど、普段の動作や食事のマナーなんかに
男性特有なワイルドさっちゅーか、下品さがなかった。

ごめんね、男の人を貶しているわけじゃないよ。
でも私はそういうところに、男らしさを感じるわけさ。

68:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:34:41.06 ID:dM6a4Ws2.net
すまん、長すぎるからちょっと3行に簡潔にまとめてくれんか?
明日から仕事でさ…すまん…ホントはメッチャ読みたいんやけど…

71:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:36:42.56 ID:LZSY7jKs.net
>>68
残念、それはムリ
おことわりしたとおり、ものすごく長い

69:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:35:03.61 ID:LZSY7jKs.net
彼がゲイだとすれば、最初に食事に誘ってくれたときのしどろもどろさや
私が友達になりたいって言ったときの即答拒否にも、納得できる。

女慣れしてる様子は単なるカモフラージュで
ほんとは私と二人きりで食事するのに抵抗があったんじゃ?
私が「彼女になる前に、まずはお友達から」と企んでると思って、警戒したんじゃ?

自分がゲイだとバレたくなくて、あんな曖昧な態度をしてたんじゃないか?
だけど私にその気がないとわかって、気を緩めてくれたんじゃないだろーか?

それに、あの顔と性格で女っ気が全然ないっていうのも、ずっと不思議だったんだ。

過去の恋愛話を聞いたら、「いやまあそれなりに~」
好みのタイプを聞いたら、「気に入れば誰でも~」
なんて、いつもゴニャゴニャ誤魔化されてしまったし。

そんなのも、M君がゲイならば、なるほどな反応だった。

70:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:35:26.33 ID:LZSY7jKs.net
………マズイ。これはマズイぞ。
いくらなんでも、三十路目前でゲイに恋するのは、ダメージ大きすぎ。

傷が浅いうちに確かめなくちゃ…
でも必死に隠してる本人に直接聞くのは、やっぱり、ちょっと…


とAちゃんにこぼしたら、「いい肴になるな!」ってとこで
美術部女子会が開催されることとなったのでした。

72:名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:37:01.31 ID:0Jv9f4W7.net
28歳喪女だけど羨ましい
彼氏ほしい….

73:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:37:35.78 ID:LZSY7jKs.net
「へえええ~、喪子がM君とはねえ~!」

「あれ?でもあんたの初恋の人、山崎努じゃなかったっけ?」

「それはそれ、これはこれだよ!」

「はー。人は顔じゃないんだねえ…使い方間違ってる気がするけど」

「でもそのDQN話はわかるなー。それは惚れるかも」

「それにあいつ、化けたよねえ。ずいぶん丸くなってたもん」

「高校生のころは、みんな遠巻きにしてたもんねえ」

「そーいえばはじめて話したの、あいつがモリエール殺したときだったなw」


準備室にあったモリエールの石膏像を、M君が落として割ったって意味ね。


「あったねー、そんなこと!」

「そうそうw
O君がモデル頼んだときも、M君最初いやがってたのに
O君贔屓だったしまピーが、モリエール殺しで脅迫してさ。
無理矢理モデルさせられてたんだよ、あれw」

74:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:38:40.22 ID:LZSY7jKs.net
「へええ。じゃあ、しまピーが二人の仲人じゃん」

「なに?仲人ってことは、M君とO君はそういう関係なの?」

「知らなーい。でも妄想するには一番手っ取り早いじゃーん」

「ちょっとー、根拠のないこと言わないでよー。
まだそうだって決まったわけじゃないんだし…」

「でもあれだよ?卒業してから、M君はO君ちで半同居してたみたいだよ?
こないだD君が言ってた。M君に連絡したい時は、O君に電話してたって」

「ほー。M君がO君ちに押しかけてたってことかあ。
で、今やO君が一児のパパってことは、M君の片想いかあ…」

「あ、でもそのころは、O君フリーでM君には彼女いたってさ」

75:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:39:02.96 ID:LZSY7jKs.net
すごい、すごいよ、女子どもの情報収集力は。
M君との個人的なお付き合いの中で、私では全く得られなかった情報を
たった三時間程度の飲み会で、ここまで把握してるなんて。


「なんだ、よかったー。M君、彼女いたんじゃん!」

「えー?でもほら、その後発症したかもしれないしー」

「そーそー、別に相手はO君じゃなくてもいいわけだしね」

「そんなあああ…」

「まあなんにしても、あの顔ならゲイでも納得するよねー」

「えっ、そう?なんかそれにしては、色気が足りなくない?」

「あー色気かー。色気はないなー」

「でもそれだったら、ゲイには全員に色気があるのかって話よ」

76:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:39:26.05 ID:LZSY7jKs.net
「なんだよー、結局どっちなんだよー」

「だって、M君がどっちだろうと、私らには全然関係ないもん」

「あんたねー、こんなとこでウダウダ言ってる前に
確かめる一番手っ取り早い方法があるでしょ?」

「そうだよ、とっとと告白してきなよ」

「うん。飲み会のときは、なかなかいい雰囲気だったよ?」

「「「頑張れ喪子!彼氏いない歴=年齢に終止符を打つんだ!(そして報告よろ)」」」


まあ、そうするしかないってことはわかってたんだけどさ。
彼女らに背中押してもらった結果、私はやっと本来の玉砕精神を取り戻して
ある日、M君の部屋でアタックした。

77:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:39:51.55 ID:LZSY7jKs.net
「M君、お話があります」

「はいはい、なんでしょう?」


どうせまた、あの本買ったら貸してでしょ?みたいな態度のM君。


「好きです。付き合ってください。
友達としてじゃなく、男性として好きになってしまいました」

「…え」


まさに、鳩が豆鉄砲な顔になるM君。
いまさらのように心臓がバクバクしてくる私。


「え、え…え、だって、えええ…?」


うろたえるようなM君の声。
相当マメデッポーだったのか、しばらく言葉が出てこないみたいだった。

78:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:40:16.15 ID:LZSY7jKs.net
「でも、ほら、なんか、あれだよね?
……喪子は俺のこと、男として見てなくなかった?」


はい!?
バレてたの!?


「うん、まあ……ごめんなさい。最初はそうでした」

「だよね?それがなぜ?いつから?」

「DQNにからまれたときから…」

「え?…あー、あれね…」

「あのとき、かっこいいなと思って…」

「ふうん、そっか」

そっけない返事が悲しかった。
私にとっては大きな出来事だったけど、M君にしてみれば大したことなかったんだな…

と思ったんだけど。

M君、手のひらで顔をパタパタあおぎだした。
表情は変わってなかったけど、赤面してたっぽい。

79:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:40:40.52 ID:LZSY7jKs.net
「いやー…あんまり突然なので、驚いた…」

「う、うん、突然ごめんね」

「いえいえ………あ、そっか。
俺、女の子から告白されたの、初めてなんだ…」



…え?
な、なにそれ、どういう意味なのそれ!?


「だだだだだって、いたんでしょ彼女!?女の!!」

「いたけど…いつも俺から告白してたから」


あ、なーんだ、そういう意味かあ!

ほっとする私。
だけどM君はそのまま黙りこんで、私がいるのを忘れたような長考に入ってしまった。

81:1@\(^o^)/ 2017/01/03(火) 19:41:41.57 ID:LZSY7jKs.net
しばらくはその沈黙に付き合ってたんだけど、途中で堪りかねて
「あのー、それで、どうでしょうか」と先を促す私。

「あっ、うん、あの…返事はちょっと…待ってもらえる?」

え。
な、なんで待つの?

やだ、死刑宣告を先送りにされてるみたいで、やだ。
いますぐここで返事してほしい、たとえ断られても。

…なんては言えず。


「はい、わかりました」


私はこの日、すごすごとM君の部屋を後にしたのでした。


PickUp!